BTSに導かれて「隣の国の言葉ですもの」にたどりついた。
茨木のり子については「わたしが一番きれいだったとき」や
「倚りかからず」を読んだことがあり、
社会性の高い、凛々しい詩を書く人だなぁと感じてはいたが、
韓国と縁の深い人であることは、この本で初めて知った。
著者は1984年ソウル生まれの金智英(キム・ジウン)氏。
現在、立教大学で講師をされている女性だ。
この本では、韓国と茨木のり子の関係性について語る前に
終戦後の日本の詩壇や同人誌「櫂」の状況を紹介している。
川崎洋の「ひらがな」もつ色彩感や音感への興味や
茨木のり子と金子光晴のアジアに対する意識の違いなど。
留学生として来日したキム・ジウン氏が
よくぞここまで研究したものだと頭の下がる思いだ。
1970年代、韓流などという言葉もなく
ハングルを学習する人がほとんどいなかった時代に、
茨木は50歳から勉強を始めた。
今日のように教材もあふれていない時代に、さぞかし苦労されたことだろう。
そして、10年余りしてハングルの翻訳を手がけ「韓国現代詩選」を刊行する。
「韓国現代詩選」は彼女が気に入った12人を選んで翻訳。
キム・ジウン氏によれば
翻訳で大胆な省略がなされていることがあるとのことで
その例が紹介されているのだが、
素人目には印象的な数回のリフレインが全てカットされていて
そのいさぎよさに驚く。
BTSの歌詞を楽しむためにハングル学習をはじめた私などは
茨木さんにしかられそうだが、
彼女がこの時代に生きていたら、きっとBTSを讃えていたと思う。
そして、コロナの時代にどんな詩を書くだろう。