除菌、除菌とうるさいご時世だ。
人にとって良い菌類も数多あるのに、
菌は駆逐すべきと、
殺菌剤を噴霧することに
何のためらいを感じない人も多いようで残念だ。
あんまり清潔志向が強いと、コロナは去っても、
アレルギーや免疫系の病気が増えるのではと心配になってくる。
「家は生態系」(ロブ・ダン著)によれば、
ハエやクモやゴキブリにとどまらず、
冷蔵庫の片隅やシャワーヘッドの中、
部屋のホコリの中などに生きている微生物も調べれば、
家は20万種の生き物が住む生態系としてとらえることができるという。
そして、その生物ひとつひとつを丹念に調べれば、
人類の役に立つことが見つかるのだとか。
たとえば、カマドウマ。カマドウマ由来の細菌には、
工場などから排出する有毒な廃液(主にリグニン)を
分解する能力があって、工業的に利用できる可能性があるそう。
この本では、殺虫剤に対応して感受性を変化させて
(好きだった甘いの匂いを嫌いになるとか)進化する
ゴキブリにも触れているが、その研究をしているのが、
なんと、勝又(和田)綾子さんという日本人女性。
2000匹のゴキブリを相手に、3年以上をかけて、
味覚感覚毛の反応を調べたという。
このように地道な研究をされている方には
つくづく感心してしまう。
家に潜む昆虫や細菌から、
難病に効く薬や放射能を分解できる物質が
発見される可能性だってあると思う。
身近な生態系にみんなが敏感になれば、
いい未来がやってきそうな気がする。